夏の暑さ対策には『遮熱塗料』がオススメ?採用する前におさえておきたいポイントについて!

今年も5月に入り、これからどんどん気温が高くなってエアコンのお世話になる夏がやってきますね。近年の日本の夏は、どんどん猛暑化が進んでいると言われており、真夏になると家の中にいても汗をかいてしまうほどの暑さを感じてしまうことも珍しくありません。特に今年に関しては、新型コロナウイルス感染症の問題もありますし、在宅時間が長くなってしまうと予想されています。そこで、これから迎える夏に向けて、どのような暑さ対策を行っていけば良いのかが重要になるでしょう。

夏場の暑さが苦手…という方は、常にエアコンをフル稼働させておくという対応をとるのかもしれませんが、エアコンのフル稼働は電気代が気になってしまいますし、何より身体にあまり良くないのではないか…と不安になってしまうことでしょう。
したがって、誰もが考えるのは「夏場でもできるだけ涼しい環境を作ってくれる家」なのです。こういった希望がある方には、外壁や屋根の塗料として『遮熱塗料』がオススメだと言われるのですが、この塗料を利用すればどういったメリットがあるのかいまいち分からない…という方も多いと思います。また、遮熱塗料は、多くの方が勘違いしているポイントがありますので、この記事では遮熱塗料の基礎知識をご紹介していきます。

遮熱塗料ってどんな塗料?

それではまず、遮熱塗料がどういったものなのかを簡単にご紹介していきましょう。遮熱塗料は、太陽光を反射する効果を持つ塗料の事を指しており、正式名称は「高日射反射率塗料」となります。2011年には、日本塗料工業会によって「JIS K5675」という工業規格も定められている塗料です。

この遮熱塗料を、屋根や外壁に塗布することで、太陽光を反射することができるようになるため、建物内部に太陽の熱が入り込むことを防ぐ事ができるようになります。そのため、遮熱塗料を採用した建物は、強い日射によって室内の温度が上昇してしまうことを抑制できるようになるわけです。

なお遮熱塗料に関しては、その性能の高さから、省エネ商品として国からも推奨されており、遮熱塗料を採用した塗装工事には自治体から補助金がおりる場合もあります。注意が必要なのは、塗料の中には『断熱塗料』と呼ばれるものも存在しており、これが遮熱塗料と同じようなものと考えられているのですが、明確な違いを持っているということです。次項で遮熱塗料と断熱塗料の違いもご紹介しておきましょう。

遮熱塗料と断熱塗料の違い!

遮熱塗料と断熱塗料は、名前が似通っているということもあり、両者が同じ効果を持つ塗料だと考えている方も多いです。しかし、この2つの塗料に関しては、性能やメカニズムが全く異なる別物だと考えてください。

遮熱塗料は、上述の通り「熱を反射する」効果を持つ塗料なのですが、断熱塗料と呼ばれるタイプは「熱伝導を抑える」塗料なのです。断熱塗料についても、夏場の暑さを軽減してくれるものなのは間違いないのですが、室内の暑さを軽減する仕組みが全く異なるわけです。さらに、断熱塗料は、熱伝導を抑えるという効果があるため、冬場に室内の熱が屋根や壁から逃げていくことも防いでくれ、冬場の寒さ対策にも役に立ってくれます。しかし遮熱塗料に関しては「熱の侵入を抑える」という暑さ対策には役立つものの、室内の熱が逃げていくことを抑制する効果はありません。

塗料の種類 遮熱塗料 断熱塗料
塗料の性能 夏の暑さは軽減できるが、冬の寒さ対策には効果がない 室内の温度変化を軽減する塗料で、暑さだけでなく寒さ対策もできる
耐用年数 10~15年 15~20年

このように、遮熱塗料と断熱塗料は全く別物ですので、混同しないようにしましょう。自宅の暑さ対策だけを考えているのであれば、遮熱塗料による塗装工事で構いませんが、冬場の寒さ対策まで行いたいと考える場合、断熱塗料を採用しなければいけません。
なお、断熱塗料は遮熱塗料と比較してもかなり高性能な塗料となるため、施工にかかる費用は高額になります。断熱塗料を採用する場合は、一般的なシリコン塗料の約1.5倍程度のコストと考えておきましょう。なお、遮熱塗料に関しては、シリコン塗料とあまり変わらないコストで施工可能です。

遮熱塗料のメリット

ここまでで、遮熱塗料がどういったものなのかはある程度分かっていただけたと思います。それでは、自宅の屋根や外壁に遮熱塗料を採用することでどういったメリットが得られるのかをご紹介していきましょう。

夏場の室内温度上昇を抑える

遮熱塗料を採用する最も大きなメリットは、建物を暑さから守り、室内温度上昇を抑えてくれると言う点です。

屋根や外壁に遮熱塗料を塗布すると、塗布面の表面温度上昇が抑制されますので、室内の温度上昇も抑えることができるのです。遮熱塗料は、日差しそのものを反射してしまうことで、熱の発生自体を防ぐというものです。実際に、各塗料メーカーや環境省などが行った、遮熱塗料を採用した場合の温度上昇抑制効果のデータは以下のようになっています。

  • 遮熱塗料を塗布した場合、非塗布の場合と比較して、屋根の表面温度が平均8~10℃下がる
  • 遮熱塗料を塗布した場合、室温が平均2~3℃下がる

このように、遮熱塗料は数値的なデータもきちんと存在しています。ただし、遮熱塗料による効果は、誰でもはっきりと違いが分かる…と体感できるほどのものではなく、「言われてみれば涼しくなっているような気がする」程度の変化と考えておいた方が良いです。

省エネ効果がある

遮熱塗料は、室内温度の上昇を抑えることで、「節電・省エネにつながる」というメリットも得られます。

現代では、夏場になるとエアコンのお世話になるという方がほとんどですが、遮熱塗料は、室温の上昇を抑制するという効果があるため、空調効率が良く冷房代の節約につながるのです。上述したように、遮熱塗料は「室温が平均2~3℃下がる」という効果があるのですが、これににより夏場のエアコンを利用する時期は10%~20%程度の節電効果を得られると言われています。
さらに、電力消費が少なくなるということは、発電によるCO2排出量の削減にも役立てるということです。したがって、自宅に遮熱塗料を導入することは、日々の光熱費を削減できるだけでなく、間接的にCO2の削減をすることができ、地球環境保全に一役買えるようになると言えます。

建物を熱による劣化から守る

最後は、熱による建物の劣化を抑える事ができるというメリットです。

どのような建物でも、そこに存在するだけで徐々に劣化が進行します。これは、屋根や外壁の建材が、日射などの熱による作用を受けることで劣化してしまうというのが原因です。上述したように、遮熱塗料というものは、日射を反射することができるため、建材の表面温度上昇を抑制することができます。つまり、遮熱塗料を塗布した外壁や屋根は、熱による作用が軽減されることになるため、建材のダメージが少なくなるわけです。したがって、遮熱塗料などの高機能性塗料を採用していない建物と比較すれば、家が長持ちする可能性があると言えるでしょう。

ただし、建物の建材は、熱の作用以外にも湿度や風雨など、さまざまな影響で徐々に劣化が進行してしまいます。遮熱塗料は、熱による劣化を防止する効果があるものの、遮熱塗料を塗ったから確実に家が長持ちするとまでは言えません。

遮熱塗料のデメリット

上記のように、遮熱塗料にはさまざまなメリットが存在します。しかしその一方で、いくつか注意しなければならないデメリットもありますので、以下で簡単にご紹介しておきます。

  • 一般的なシリコン塗料よりは割高
    まずは、施工費用の面からです。遮熱塗料は、断熱塗料と比較すれば安価に暑さ対策ができるのですが、一般のシリコン塗料などと比較すれば、割高になってしまいます。ただし、近年では遮熱塗料の価格が落ちてきたことから、一般の塗料とそこまで大幅な価格差は無いと考えても良いです。
  • 高性能塗料の割に塗膜の耐久性が高くない
    近年では、高性能なうえに非常に耐久力の高い塗料が増えています。したがって、遮熱塗料に関しても、そういった高性能塗料とひとくくりにされて、長持ちする塗料と考えてしまう方が多いです。遮熱塗料は、塗膜自体の耐久力が高いわけではないので、一般の塗料と同じぐらいの寿命と考えてください。
  • 冬場の寒さ対策はできない
    これは、遮熱塗料と断熱塗料を混同してしまっている方に対するデメリットです。上述しているように、遮熱塗料はあくまでも暑さ対策に役立つ塗料です。断熱効果などをもっている塗料ではありませんので、冬場の寒さ対策には何の役にも立たないと考えてください。夏の暑さと冬の寒さ、両方の対策がしたい場合には、断熱塗料を採用しなければいけません。

まとめ

今回は、夏場の暑さ対策に有効と言われている遮熱塗料の基礎知識をご紹介してきました。日本の夏は、年々猛暑化が進んでいると言われており、最近ではエアコンをつけていても暑さを感じてしまう…なんてことも珍しくないと言われています。こういった夏の暑さ問題は、主にマンションのような集合住宅で起きる物と考えられていたのですが、最近では戸建住宅でも「夏の暑さを何とか解消したい…」という要望が増えています。

こういった時に非常に心強い味方となってくれるのが、遮熱塗料を始めとした高機能性塗料です。遮熱塗料は、夏の強い日差しを反射し、室内に伝わる熱を抑えるという効果を持っていますので、エアコンの稼働率を下げることができ、光熱費削減も実現します。
ただし、夏の暑さだけでなく、冬場の寒さにも対応できるようにしたいとお考えであれば、遮熱塗料ではなく、断熱塗料を採用するのがオススメです。施工費は高額になってしまいますが、夏も冬もエアコンの稼働を抑えられますし、何より耐用年数が長いので、中長期的に見るとコストパフォーマンスが良い塗料と言えます!