皆さんは『認定低炭素住宅』というものを耳にしたことがあるでしょうか?地球温暖化が、世界中が協力して解決しなければならない課題とされている昨今、人々の日々の生活から『低炭素』を実現できるような住まいが求められるようになっており、近年の不動産業界でも『低炭素住宅』という部分をメリットとして売りに出されている物件が増えています。
実際に、大手メディアなどでも『低炭素住宅』が特集されることも増えてきており、皆さんの中にも低炭素住宅という言葉は耳にしたことがあるという方も多くなっているでしょう。しかし、実際の所「低炭素住宅というものがあるのは知っているけれど、これがどういったものかは分からない?」という方の方が多いのが実情なのではないでしょうか?近年では、新築戸建てを購入する時には、「長期優良住宅」や「ZEH住宅」など、さまざまな用語が飛び交いますし、それぞれがどういった特徴があるのかいまいち理解できていない…という方が多いです。
そこでこの記事では、『低炭素住宅』がそもそもどのようなものなのか、またこれに認定されるための基準は何なのかをご紹介していきます。低炭素住宅は、住宅ローンの金利優遇が受けられるなど、家の購入を考えている方にとって、非常に嬉しいメリットがたくさんありますので、将来的なことも考えて低炭素住宅の特徴を押さえておきましょう。
そもそも『低炭素住宅』とは?
それでは、地球温暖化問題解決のために重要視されている『低炭素住宅』について、これがどのような住宅のことを指しているのかについて解説しておきましょう。
低炭素住宅は、そこまで難しいものではなく、市街化区域内に建築された住宅うち、二酸化炭素の排出を抑えるための対策をとられた環境に優しい住宅であって、いくつかの認定基準を満たしたものを指しています。都市部では社会経済活動などに伴って、多くの二酸化炭素が排出されており、地球環境保全を考えた場合、低炭素化に向けた取り組みをいち早く進めていくことが非常に重要とされているのです。
こういった背景から、平成24年12月に「都市における低炭素化を促進し、持続可能な社会の実現を目指すこと」を目的に、『都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)』が施行されました。そして、エコまち法に基づいてスタートした制度が「低炭素建築物認定制度」で、低炭素住宅に認定されることで、さまざまな優遇措置が受けられるようになっているのです。
低炭素住宅の認定基準について
低炭素住宅に認定されるためには、いくつかの基準を満たさなければいけません。そして認定基準にも、『定量的評価項目』と『選択的項目』の2つの認定基準がありますので、それぞれを以下でご紹介しておきます。
定量的評価項目
定量的評価項目については、低炭素住宅の認定を受けるため、必ずクリアしなければならないとされている基準となります。項目については「外皮の熱性能」と「一次エネルギー消費量」についてです。
- 外皮の熱性能
省エネ基準と同等以上の断熱性能、日射遮蔽性が確保されていること - 一次エネルギー消費量
省エネルギー法の省エネ基準よりも、一次エネルギー消費量が10%以上削減できていること
この二つの項目は、低炭素住宅の認定を受けるための必須項目となります。
選択的項目
選択的項目については、下記の条件の中から2つ以上該当していることで、低炭素住宅の認定条件をクリアすることが可能です。
- 節水対策
(1)節水に役立つ機器を設置している(節水便器や食器洗い機の採用など)
(2)雨水・井戸水または雑排水を利用するための設備を導入している - エネルギーマネジメント
(3)HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)を設置している
(4)太陽光などの再生可能エネルギーによる発電設備と、それに連係した定置型蓄電池を設置している - ヒートアイランド対策
(5)敷地・屋上・壁面の緑化など一定のヒートアイランド対策が行われている - 建築物(躯体)の低炭素化
(6)住宅の劣化を軽減する措置が取られている
(7)木造住宅である
(8)構造耐力上主要な部分に、高炉セメントまたはフライアッシュセメントを使用している
『低炭素住宅』のメリット
それでは、低炭素住宅の認定を受けることで得られるメリットをご紹介していきましょう。低炭素住宅のメリットとしては、住宅ローンの金利優遇が受けられるというのが大きなメリットと言われているのですが、実はこれ以外にもさまざまなメリットが存在しています。
ここでは、低炭素住宅にすることで得られるいくつかのメリットをご紹介していきます。
住宅ローンの金利優遇
まずは、住宅ローンの金利優遇についてです。これは、民間住宅ローンである「フラット35」を利用し、省エネルギー性に優れた住宅を建築した場合、金利優遇措置を受けることができるというものです。
フラット35で言うところの省エネルギー性とは、「認定低炭素住宅、一次エネルギー消費量等級5の住宅、性能向上計画認定住宅」のことで、フラット35での通常金利が1.27%だったとすると、認定低炭素住宅であり、金利優遇措置を受けることができれば、ローンを組んでから10年間は、金利が1.02%になるというように、大幅に引き下げられるのです。
11年目以降は通常の金利に戻ってしまうのですが、10年間の金利優遇があることで、平均的な新築戸建てを購入した場合には、数十万円以上のお金を得すると言われています。
夏も冬も快適な住環境になる
低炭素住宅は、家そのものの機能が高い住宅になります。上述したように、低炭素住宅は『省エネ基準と同等以上の外皮の熱性能』が必須とされています。つまり、これは外皮の熱性能が非常に高い家が建てられるということですね。
これによって、夏場は外からの熱を外皮で遮断することができ、冬場は室内の暖かい空気を外に逃がさないという機能性を得られます。その結果、夏は涼しく、冬は暖かいという、1年中快適な住空間を実現してくれるのです。この部分は、誰もが家に求める大きなメリットですね。
日々の光熱費を削減できる
外皮の熱性能の向上により、外気温の影響を受けにくくなります。そのため、夏場も冬場もエアコンの使用量を抑えることができるようになるため、電気代の削減が期待できます。
他にも、低炭素住宅の選択認定項目について『節水対策』を選んでいた場合、節水能力が高い家ですので、水道代の節約も可能です。
所得税の軽減措置
認定低炭素住宅については、住宅ローンを組まずに建築した場合、税制優遇を受けることができます。具体的な優遇措置は、
控除限度額・・・65万円
控除率・・・10%
なお、上述した住宅ローンの金利優遇と、この税制優遇は併用できませんので、どちらかを選択する必要があります。なお、住宅を購入する時には、所有権の保存登記や移転登記を行うことになり、登録免許税がかかります。そして、低炭素住宅の場合は、登録免許税の軽減措置もあります。
低炭素住宅の注意点
それでは最後に、低炭素住宅の注意点についてもご紹介しておきましょう。低炭素住宅は、上記のように、金銭的な優遇措置が用意されているなど、さまざまなメリットが存在します。しかし、いくつかの注意点もありますので、以下のような点は理解しておきましょう。
まず一つ目の注意点は、「設備費用が高くなる」という点です。上述したように、低炭素住宅は、いくつかの認定基準を満たすために、省エネに特化した設備を導入しなければいけません。そのため、一般的な戸建住宅よりも、建築費が高額になってしまいがちです。この部分に関しては、日々の生活にかかる光熱費を削減できるなど、中長期的に見た場合、設備のコストアップ分は取り戻せると言われていますが、確実に取り戻せるとは言えません。
もう一つの注意点は、低炭素住宅は、原則として市街化区域内に建築されるものでないと認定申請ができないという点です。「市街化区域」は、都市計画法において、『既に市街化を形成している区域、および概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域』と定義されている区域です。
そもそもエコまち法は、都市における低炭素化を促進することが目的ですので、低炭素住宅も、多くの人が住んでいて今後も発展が望まれる市街化区域やそれに準じる区域が対象となっているのです。そのため、低炭素住宅を検討している方は、家の建築予定地が市街化区域に指定されているのか前もって調べておく必要があります。
まとめ
今回は、近年よく耳にするようになってきた低炭素住宅について解説してきました、。地球温暖化問題など、環境への配慮が重要視されている近年では、人が一日の中で最も長い時間を過ごすことになる、自宅のエコ住宅化が非常に重要とされるようになっています。実際に、この記事でご紹介した以外にも、ZEH住宅や長期優良住宅など、エコに配慮した住宅にもいくつかの種類が存在するようになっているのです。
低炭素住宅を始めとして、こういったエコに注目した住宅というものは、家そのものの機能性を高めるため、設備や建材などに高機能な物が使用されます。そのため、家の建築にかかるコストがどうしても割高になってしまうことが、なかなか悩ましい問題になる事でしょう。ただし、その家に長く住み続けることを考えた場合、日々の光熱費削減効果などによって、初期にかかるコストを長期間かけて取り戻すことが可能ですので、一概に割高な家ともいえないと思いますよ。
低炭素住宅などは、ただその家に住んでいるだけで地球環境保全に役立つことが出来ますので、これから家の購入を検討している方も、「エコな家」という点に注目してみるのも良いかもしれませんね!