今回は、11月の終わりごろに突然ニュースとして届けられた「2022年度の税制改正で、住宅ローン控除の内容が改悪される可能性が出てきた!」という情報について、住宅ローン控除のどのあたりが改悪されるのか、またなぜこのような話が突然出てきたのかについて簡単に解説していきたいと思います。
なお、この情報に関しては、先行的に報道された物であり、実際に税制改正で住宅ローン控除に何らかの変更が加えられるのかは不明な状態です。しかし、憧れのマイホームを…と、近々新築戸建て住宅の購入を検討している方は非常に気になる情報だと思いますので、どういった予想になっているのかを簡単に見ていきたいと思います。
そもそも現行の住宅ローン控除とは?
それではまず、マイホームを手に入れる方にとって非常に助かる制度となっている「住宅ローン控除(正式名称は住宅借入金等特別控除)」について、そもそもどういった仕組みの制度なのかについて簡単にご紹介しておきます。住宅ローン控除は、個人が住宅ローンを利用して、マイホームを新築・取得・増改築などをした場合に、「年末時点のローン残高の1%」が所得税などから還付される減税制度のことを指しています。この制度を利用すれば、最大で約600万円の税金が還付されることになりますので、マイホームを取得する方にとっては非常にお得な制度として有名です。
住宅ローン控除は、いくつかの条件が設けられているものの、そこまでややこしい条件ではありませんし、その要件さえ満たしてしまえば、個人が住居として利用するマイホームなら、新築・中古問わずに適用される制度となっています。
なお、控除が受けられる期間については、最長10年間とされていたのですが、消費税が8%から10%に引きあがられた際、いくつかの条件を満たすことで「最長13年間」控除を受けられるという優遇措置も設けられています。ちなみに、11~13年目の税額控除については「①年末住宅ローン残高×1%」「②(住宅取得等対価の額-消費税額)×2%÷3」という計算を行い、いずれか少ない額が限度額となります。
それ以外の還付金額は、最大で年間40万円、10年間で400万円というのが基本となります。なお、認定長期優良住宅や認定低炭素住宅の場合は、年間最大50万円の還付が受けられることになっており、所得税から控除しきれなければ住民税からも控除されることになります。
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住宅ローン控除の適用条件
住宅ローン控除を受けるためには、以下の各種条件を満たしている必要があります。
- 減税を受けようとする人が、住宅の引き渡し日から6ヶ月以内に居住を開始すること
- 特別控除を受ける年の合計所得が3,000万円以下であること
- 対象の住宅について、床面積が50㎡以上で、その1/2以上が自身の居住用であること(床面積40㎡以上50㎡未満の場合は、合計所得が1,000万円以下であれば適用可能です)
- 対象の住宅について、10年以上にわたる住宅ローンがあること
- 居住用にした年とその年の前後2年ずつを合わせた計5年間に、居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例といった適用を受けていないこと
住宅ローン控除は、上記の条件を満たしていなければいけません。なお、控除期間が10年間なのか13年間なのかは、「契約時期」や「居住開始時期」が関係してくるのですが、注文住宅にしても既存住宅にしても、契約時期の条件が既に過ぎているので、ここでは省きます。
住宅ローン控除がなぜ見直されるのか?
それでは、なぜ今になって住宅ローン控除の見直しという話が出てきたのかについて考えて見ましょう。そもそも住宅ローン控除というものは、マイホームの購入を後押しする言う役割りも存在するのですが、その制度が改悪されるとなると、コロナ禍の消費喚起にも悪影響が出てしまうのではないか…と考えてしまいますよね。しかし、今回の住宅ローン控除の見直しに関しては、以下のような経緯があると言われているのです。
住宅ローン控除というものは、「住宅ローンを借入れて、住宅を取得する際に、取得者の金利負担を軽減する」という目的で作られた制度です。この制度は、もともと1972年に制定された『住宅取得控除』が、何度かの税制改正を繰り返されるうちに、1986年に住宅ローンを利用する人に対する支援として進化していったという歴史があり、この時に現行のような、年度末の住宅ローン残高の一定率(1%)を税額控除する「住宅取得促進税制」になりました。
この時の名称を見ればよくわかるのですが、制度の目的は住宅取得の促進を図るというものだったのですが、現在と制度導入当時では非常に大きな違いがあるのです。というのも、現在では、超低金利時代などと言われているように、1986年頃と比較すれば、考えられないような低い金利の時代になっています。例えば、1986年の「旧住宅金融公庫」の住宅ローン融資基準金利は、なんと「5.25%(1986年3月時点)」なのです。これが現在の住宅ローンを考えてみれば、フラット35のような固定金利でも、最高金利で1.8~1.9%で最低金利になると1.2%程度とかなり低くなっているのです。さらに、変動金利になってくると、0.5%を下回る金利になるなど、制度が作られたときとは状況が全く違ってきているわけですね。
こういった違いが生じていることで、制度の穴をついた裏ワザが横行するようになり、住宅ローン控除の見直しが必要と考えられるようになっているのです。
超低金利で逆ザヤ状態になっている
住宅金融支援機構が公表した「住宅ローン利用者の実態調査」によると、現在、住宅ローン利用者の過半数となる約6割は変動金利型を選択するようになっています。これは、超低金利時代と言われるように、変動金利型の住宅ローンは、非常に低い金利設定になっているからです。
上述したように、変動型の住宅ローン金利は0.5%を下回っているのが当たり前で、auじぶん銀行になると、変動型金利を選択した場合、「0.31%」の超低金利なのです。
例えば、auじぶん銀行の変動型住宅ローンを選択し、年末に4,000万円のローン残高があった場合を考えてみましょう。この場合、住宅ローンの利息は124,000円になるのですが、住宅ローン控除で受けられる控除額については40万円で、27万円以上も得をしているという状態になってしまいます。
つまり、現在のような超低金利時代に、従来通りの制度のままだと、住宅ローン控除による控除額が住宅ローン金利の支払額を上回ってしまうという状態になってしまい、実質的には、『マイナス金利』で住宅ローンを組んでいるという意味不明な状態になっていると指摘されているわけですね。
実際に、「家を買うなら現金があっても住宅ローンを組んだ方が得」というような話をよく耳にしますし、このような逆ザヤ状態から「必要のない住宅ローンを組む動機づけになっている」「住宅ローンの繰り上げ返済をしない動機づけになっている」という点を問題視しているわけです。
参照データ:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査」
参照:auじぶん銀行住宅ローン
まとめ
今回は、2022年の税制改正で行われると言われている「住宅ローン控除の改悪」について、どういった事が原因で、今住宅ローン控除の見直しが必要とされているのかについてご紹介してきました。
要は、超低金利時代で、逆ザヤ状態になってしまっていることから、不必要な住宅ローンの動機づけになっているという点が懸念とされているのです。実際に、変動金利が0.5%を下回る現在では、「家は住宅ローンを組んだ方が得」という話をよく聞きますし、「見直しが必要では?」と指摘されるのは致し方ないかもしれませんね。なお、気になる住宅ローン控除の変更内容についてですが、現在まだ詳しい変更点は未定となっています。いろいろなニュースサイトを確認してみると「実際に支払った住宅ローンの利息額が上限になる」「一律1%が1%or借入利率の低い方」に変更されるなどの予想がなされています。
どちらにせよ、「住宅ローンを借りることによって逆にもうかる」という状況が見直されることにはなると思います。そして、この見直しが入った場合に、これから家の購入を検討しているという方が注意すべきなのは、現在のよう「住宅ローンは変動金利一択!」という状況ではなくなるということでしょう。住宅ローン控除のことまで含めると、現在のように変動金利の低金利を生かして、税控除を期待するということができなくなりますので、より慎重に利用する住宅ローンのプランを決めなければならないでしょう。
住宅ローン控除の見直しについては、続報が届き次第、またご紹介しようと思います。