全国的に梅雨明けのニュースが聞こえ始めた今日この頃ですが、これからは本格的な夏がやってきますので、熱中症に注意が必要です。この時期になると、テレビやラジオなどからも「熱中症対策のためこまめな水分補給を!」などという言葉が聞こえてきますし、外出時には細心の注意を払っているという方は非常に多いと思います。
しかし、熱中症というものは、屋外でばかり発生するのではなく、家の中にいる時に熱中症を発症してしまう方も意外に多いのです。一般的に、屋外での作業となる建設作業員や、学校の体育の授業など、気温の高い状態で直射日光まで受ける…なんて時に熱中症を発症すると考える方が多いと思うのですが、そうではないのです。
そこでこの記事では、熱中症対策を考えた場合、家の中のどういった場所が危険なのか、また、どういった対策を行っておけば良いのかについてご紹介していきたいと思います。
家の中での熱中症が増えている!?
年々猛暑化が進んでいると言われている日本の夏は、最高気温が35℃を超えるような日も珍しくなくなっています。当然、自宅で過ごすときには、エアコンなどをつけていますし、「熱中症の心配なんてないのでは?」と考えてしまう方が多いことでしょう。しかし、2020年の夏のデータを見てみると、家の中も熱中症の危険があるということがよくわかります。以下に、東京消防庁が公表した、熱中症の緊急要請時の発生場所のデータをご紹介しておきます。
引用:東京消防庁
上のグラフを見ていただければわかりますが、熱中症の緊急要請時の発生場所は「住宅などの居住場所」が44.7%と最も多くなっているのです。普通に考えれば、工事現場など、屋外で作業を続ける工事現場などが最も多くなりそうなものですが、そうではないのです。これは、屋外は暑くても「家の中にいれば安心だ!」と油断してしまい、水分補給などをおざなりにしてしまう方が多いのが原因だと考えられます。また、コロナ禍の現在では、家の中でもマスクを着用したり、在宅時間が長くなったことで、光熱費を気にしてしまいエアコンの使用を控えてしまっている…なんて方が多くなっているのも大きな要因かもしれません。どちらにせよ、「家の中にいれば熱中症の心配はない!」という考えは大間違いですので、しっかりと対策をしていくようにしましょう。
それでは、家の中のどの部分で熱中症が発生してしまっているのかも考えてみましょう。旭化成建材快適空間研究所が行った「住宅の温熱性能と居住者の意識(熱中症に関する意識)」調査によると、「住宅内で熱中症(疑いも含めて)になった」と回答した人は10人に1人(10.7%)という割合でした。そして、熱中症の発生場所に関しては、以下のような順位になっているのです。
- 1位 寝室・・・28.3%
- 2位 居間・食堂・・・25.6%
- 3位 脱衣所・・・16.9%
- 4位 洗面所・・・12.8%
- 5位 廊下・・・9.6%
家の中で熱中症が発生する場所は、なんと寝室が1位という結果になっています。寝室は、太陽も沈んだ夜に使用する部屋ですし、非常に意外な結果だと思うのではないでしょうか?これに関しては、「人間が寝ている間に多くの水分を失う…」ということを見落としてしまっているのが主な原因と考えられます。そもそも、マンションなどの鉄筋コンクリート造の建物に住んでいる場合、コンクリートが昼間の強い日射で温められてしまい、その熱を夜まで蓄えている状態が続きます。そのため、夜になっても寝室の温度が意外に高い…なんてことは珍しくないのです。それでは、その状態の寝室で眠った場合、どうなるでしょうか?当然、眠っている間に寝汗をかいてしまうことになりますよね。一般的に、人は眠っている間にコップ1杯分の水分を失うと言われていますし、このような部屋で眠った場合、それ以上の水分を失ってしまい、水分不足による熱中症が発症するのだと考えられます。
こういった各種データからも分かるように、家の中にいるからと言って、熱中症にならないわけではないので、決して油断しないようにしましょう。
データ参照:「住宅の温熱性能と居住者の意識(熱中症に関する意識)」調査結果について
家の中での熱中症になる理由
それでは、直射日光などの影響がない家の中にいても熱中症になってしまう理由についても簡単にご紹介しておきましょう。
まず一つ目の理由として考えられるのは、夏の初めごろによくある症状で、体が夏の暑さにまだ慣れていなくて、屋内と屋外の気温差で熱中症を発症してしまう…というものです。例えば、暑さに慣れていない時には、エアコンをつけた室内から、洗濯物を干しにちょっとだけ屋外に出て軽い作業を行っただけで、熱中症の症状が出てしまう…なんて方が意外に多いです。お買い物なども同様ですが、「短時間だから大丈夫!」などと考えてしまい、いきなり熱中症の症状が生じるわけです。こういった熱中症に関しては、暑さに慣れないうちは、「熱中症リスクが高まる」ということを認識し、極端に気温の高い時間帯を避けで屋外作業をする、徐々に体を暑さに慣れさせていくようにしましょう。
コロナ禍の現在では、コロナ対策による熱中症の危険もあると言われています。例えば、小まめな換気を求められている現在では、エアコンを28℃に設定して稼働させていたとしても、換気をすることで、設定温以上の気温になっている…なんてことも多いです。そのため、「エアコンをつけているから大丈夫」と考えてしまい、いつの間にか熱中症になっている…なんてことがあるそうです。また、室内でマスクをしている方も増えた現在では、マスクの着用により、喉の渇きを感じにくくなることで水分不足による熱中症を引き起こす方が多くなっていると言われています。室内にいる時でも、喉の渇きを感じる前に、小まめに水分を補給するように心がけるのがオススメです。
見落とされがちな熱中症原因
ここまでの説明で分かるように、家の中にいても、熱中症リスクは意外に高いと考えなければいけません。そして、多くの方が見落としてしまっている熱中症原因も存在しますので、以下のようなポイントは注意してください。
- 家の中には熱のこもりやすい場所がある
忘れてはいけないのは、家の中には熱がこもりやすく、熱中症リスクが高い場所があるということです。例えば、お風呂場や洗面所は乾燥機などのもあり、湿気+熱気という熱中症リスクが非常に高い環境になりやすいです。また、家の中でも二階部分は、昼間に熱気がこもってしまいますので、二階(最上階)に寝室がある場合、そのまま寝てしまうと熱中症リスクが高くなります。寝る前に換気や冷房で環境を整えるようにしましょう。 - 入浴時の脱水
入浴は意外に水分が失われますので注意しましょう。「41℃の風呂に15分入浴後30分安静」といった一般的なお風呂の入り方でも、約800mlの水分が失われると言われています。脱水は熱中症を引き起こす原因ですので、入浴前後はしっかり水分補給をしましょう。 - 気付かないうちに脱水している
人は、発汗以外でも水分を失います。例えば、呼吸をする際の呼気には水分が含まれています。これは不感蒸泄と呼ばれ、意識していなくても誰にでも起こる現象です。したがって、汗をかいていない状態でも小まめな水分補給を行ってください。 - 睡眠が原因となる熱中症
上述したように、人は寝ているだけでコップ1杯分の水分を失っていると言われていますので注意しましょう。また、暑さで「眠れない…」なんて状態になると、体力を奪われてしまうことで熱中症リスクが高くなってしまいます。電気代が気になるかもしれませんが、眠れないぐらいならエアコンをつけた方が絶対に良いですよ。 - 水分補給時の注意点
小まめに水分を補給していたのに熱中症になった…なんて話はよく聞きますよね。これは、体から水分が失われる際に塩分なども一緒に排出されているという点を見落としているのが原因です。汗には塩分(ナトリウム)などの電解質(イオン)が多く含まれているので、水だけ補給していたのでは血中の塩分濃度が低くなり、逆に熱中症を悪化させてしまう恐れがあるのです。熱中症予防を考えた時には、0.1%~0.2%の食塩水やイオン飲料などを摂るようにしましょう。なお、「ビールを飲んでいるから水分を補給している!」なんてお酒好きの方がいますが、アルコールには利尿作用があるため、水分補給に適していないと考えましょう。ちなみに、お茶もです。
熱中症を防ぐには?
それでは最後に、家の中で発生する熱中症を防ぐための対策についてご紹介しておきましょう。最も良い対策となるのは、エアコンを稼働して快適な環境の部屋で過ごすということなのですが、上述したように、昼間に寝室が温められてしまい眠っている間に熱中症になってしまう…なんてことも考えられます。戸建住宅での暑さ対策については、別記事で詳しくご紹介していますので、ここでは簡単にご紹介しておきます。
暑さ対策の詳細が知りたい方は以下の記事も合わせて読んでみてください。
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寝る前に換気をして熱を逃がす
日差しが強い夏場は、昼間に2階(最上階)の部屋が暖められてしまい、夜になっても熱がこもっている…ということが多いです。カーテンを閉めていれば、室内の空気が温められるのをある程度防げますが、室内側での対処ですので、完全に熱を防ぐことができません。したがって、寝る前などに2階部分をしっかりと換気して、熱を逃がしておくようにしましょう。
対角線上の窓を開放すれば、風が通りやすいのですが、窓の位置的に難しい…という場合は、サーキュレーターなどを使用して室内の熱気を外に出すようにしましょう。
屋外で日射を防ぐ
日射によって室内の空気が温められるのを防ぐには、室内のカーテンではなく、屋外側で行うようにしなければいけません。例えば、すだれなどを設置して日射を防ぐことで、室内に熱気がこもることを防ぐことができます。また、ベランダのある部屋は、照り返しで室内が温められることがあるので、ベランダの床面も隠せるように張り出すように設置するのがオススメです。
屋根や外壁の対策
近年では、遮熱効果や断熱効果を持った塗料が登場しており、こういった塗料を使って外壁や屋根の塗装を行うことも、熱中症対策に非常に効果的です。特に断熱塗料に関しては、冬場の寒さ対策にも有効ですし、単なる熱中症対策としてではなく、住宅の快適性を高めることも可能です。
まとめ
今回は、これから本格的に気温が高くなってくることに備えて、家の中での熱中症事情についてご紹介してきました。熱中症は、長時間屋外にいて、日射にさらされるづけることで発症するものと考えている方が多いです。そのため、家の中にいれば「熱中症の心配はない!」と考えてしまうのだと思います。しかし、この記事でご紹介したように、東京消防庁が公表した2020年における熱中症の緊急要請に関しては、「住宅などの居住場所」が最も多いという結果であり、家の中にいれば安心かというと、全くそのようなことはないのです。
基本的には、エアコンを稼働させ、快適な環境を作る事と、適度な水分補給を行っておけば熱中症リスクを下げられると思います。電気代などは気になるかもしれませんが、熱中症は命に係わる非常に深刻な問題ですので、猛暑化が進む日本では「夏のエアコンは必要不可欠!」と考えておいた方が良いですよ。