戸建住宅の水害対策。水害に強い家の特徴や直前にできる水害対策について

こんにちは、住まいのアドバイザーむとうの家です。今回は、年々増加している台風や集中豪雨による水害について、そもそも水害に強い家を建てるために注意しておきたいポイントや水害を防ぐための直前の対策についてご紹介していきたいと思います。

日本は、地震による被害が多い国として有名ですが、近年では夏場の集中豪雨や台風などによる水害が増えていると言われています。ここ数年のことを考えても、2018年に発生した西日本豪雨や、昨年の台風19号による広範囲の浸水被害など、毎年のように水害による大災害が発生しています。さらに、今年に関しては、まだ台風シーズンに入っていないにもかかわらず、7月に九州地方で集中豪雨が発生しており、この豪雨災害ではなんと27地点で過去最大の72時間雨量を観測しているなど、今や日本全国どこに住んでいても水害への対策は考えておかなければならない時代と言っても良いのです。

それでは、新築戸建て住宅を建築する際、「できるだけ水害による被害を防ぐには?」と考えた場合、何か特別な対策を取った方が良いのでしょうか?ここでは、できるだけ水害に強い家を建てるため、皆さんがおさえておきたいポイントをご紹介していきます。

ハザードマップの確認が大切!

水害から自分の家を守りたいと考えた場合、現在住んでいる地域やこれから家を建てようと考えている地域で、どのような災害が考えられるのか…ということをハザードマップで調べておくことが大切です。災害後にはよく耳にする『ハザードマップ』という言葉ですが、実際に自分が住んでいる地域のハザードマップすら確認したことが無い…という方も多いのではないでしょうか?ハザードマップは、その地域で考えられる浸水被害や土砂災害などを確認することができるうえ、安全な避難場所やそこまでの経路などを確認できるものですので、家の購入を検討した場合、絶対におさえておきたいポイントの一つと言えるのです。

実際に、近年発生した水害については、ハザードマップで「浸水が発生すると想定される地域」と「本当に浸水が起きた地域」がほとんど一致した例などもあると報道されているほどです。家を建てる時には、建物の外観デザインや住みやすさなどに注目する場合が多いのですが、家族の安全を守るためには家を建てる候補地にどんなリスクが潜んでいるのかはしっかりと押さえておかなければいけないのです。
なお、家を建てる際には、不動産会社やハウスメーカーの担当者などに、災害のリスクを確認するのもオススメです。そうすれば、ハザードマップでは確認できない情報まで教えてくれることもあるのです。

参考:ハザードマップの確認はコチラ

水害に強い家とは?

引用:国土交通省「浸水の予防・人命を守る家づくり

それでは次に「水害に強い家とは?」と言う点についてみていきましょう。戸建て住宅を水害から守るためには、『床上浸水を防ぐ』というのが一つのポイントになります。
もちろん床下浸水の場合でも、床下に入り込んだ泥や土砂などを取り除いて消毒・乾燥などをしなければいけませんので、それなりの住宅被害が出ていると言えます。しかし、床上浸水までの被害になると、住宅の壁や建具、家具や家電にまで被害が生じてしまいますので、被害総額が跳ね上がってしまう結果になるのです。

上の画像は、国土交通省が紹介している「浸水の予防・人命を守る家づくり」に掲載されているものなのですが、家づくりの際に上図の様な構造を採用すれば災害時の被害軽減が可能になると説明されています。つまり、水害に強い住宅を作りたいと考えた場合、こういった構造を参考にすれば良いのです。
以下でそれぞれの構造の利点をもう少し詳しくご紹介しておきます。

かさ上げ(盛り土)

「盛り土」は非常にわかりやすい手段です。要は、敷地全体に土を盛って、住宅を周囲よりも高くして水害に備えるという考え方になります。
当然のことですが、敷地は高ければ高いほど、その分水害から家を守れる可能性が高くなります。したがって、周囲の土地よりも低い敷地に家を建てる場合には、ぜひやっておきたい対策と言えるでしょう。ただし、いくらでも盛り土ができるというわけではなく、敷地に盛り土をするにも限界はあります。
デメリットとしては、土を他の場所から持ってこなければならないため、その分材料費と工事費が高くなってしまうことです。また、盛り土をした分の重さによって地盤が沈下してしまう場合がありますので、盛り土を検討する場合には地盤調査が必要になることがあります。

高床構造

これは、家の基礎部分を高くして、通常よりも家の床面を高くする手法です。家を建てる時には、まずはコンクリートなどで基礎を作る事になるのですが、その基礎を通常よりも高くするため、床上まで浸水するリスクを減らすことができるのです。
高床構造は、水害対策に有効だということ以外にも、湿気対策としても有効だと言われています。

ピロティ構造

高床構造に似たもので「ピロティ構造」というものがあります。これは都市部の狭い土地に家を建てる際などに採用されることが増えています。この構造は、1階部分に居室を作らず、1階はガレージで2階以上を居室スペースとして利用するという構造になっています。
居住スペースが浸水するリスクがほぼなくなりますので、水害対策としては非常に有効な手段と言えるでしょう。1階部分の構造は柱だけといった感じになるため、水のエネルギーを受けにくいという利点があるのですが、その分、十分な強度を持つ構造にしなければいけません。

塀などで囲む

敷地にある程度余裕があるのであれば、家の周囲を防水性のあるコンクリートなどの塀で囲み、敷地内への浸水を防ぐという手法もあります。頑丈な塀で囲んでいれば、数十cm程度の浸水には十分耐えられることができますし、自治体によっては補助金が用意されている場合もありますので、有効な手段と言えるでしょう。
注意が必要なのは、人が出入りする部分に開口部がどうしてもできてしまいますので、その対策として止水板や土のうなどを準備しておく必要があると言う点です。

建物防水

建物防水は、住宅の外壁などに耐水性のある建材を使用し、さらに防水性のある外壁塗装などを採用することで住宅内への浸水を防ぐ手法となります。外壁に施す塗装などは、紫外線などの影響で経年劣化してしまいますので、防水性を維持するために定期的な再塗装が必要になるなど、メンテナンスコストも念頭に入れておかなければいけません。
しかし、しっかりと再塗装などのメンテナンスを行っていることで、建物自体の良い状態を長く保てることができるようになりますので、建物の寿命を延ばすことにもつながります。

家の浸水を防ぐ直前の水害対策

ここまでは、家の建築時点で考えておきたい水害対策についてご紹介してきました。上述したように、家づくりの際には、建築時点で水害対策も考えて構造を決めるというのが重要になるのです。

ここからは、実際に台風や集中豪雨にあった際、家の中に水が入ってこないようにするため、直前でもできる水害対策についてご紹介しておきたいと思います。

水の侵入口を土のうで塞ぐ

最も一般的な水害対策としては、玄関などの開口部を土のうで塞いで浸水を防ぐというものです。土のうは、ホームセンターなどに行けば普通に売っていますので、普段から水害を想定して用意しておくのも良いでしょう。ただし、土のうにつめる土を用意するのが難しい…という住宅も少なくありませんので、そういった場合には、ゴミ袋を利用した水のうを使うのがオススメです。
浸水防止で土のうを並べる場合の手法は以下を参考にしてください。

・土のうは平たく並べ、隙間なく敷き詰める
・積み重ねるときは、下の段の土のうと 1/3~半分程度ずらして並べる
・築いた土のうの堤防はビニールシートで覆い、防水性能を高める
・(可能であれば)重ねた土のうの上から土砂をかけて踏み固め、隙間をなくす
・(可能であれば)3段以上重ねるときは、水圧で崩れないように杭等を打ち込み補強する
引用:東京商工会議所「水害対策ガイドブック」より

その他の簡易的な浸水対策

土のうが準備できていない場合は、以下のような手段で浸水対策を行うと良いでしょう。

  • 簡易水のうとダンボールで浸水防止
    40リットル程度の容量のごみ袋を二重にして中に半分程度の水を入れてください。作成した水のうを段ボール箱に詰め、レジャーシートなどで包んでください。玄関など、水の侵入口になる部分に、この水のうを隙間なく設置すればOKです。(買い物用のポリ袋などでも代用できます)
  • ポリタンクとレジャーシートで浸水防止
    灯油用のポリタンクが複数あれば、それに水を入れてレジャーシートでくるめば簡易的な水のうとして利用できます。
  • プランターとレジャーシートで浸水防止
    土を入れたプランターがあれば、それをレジャーシートで包み、止水板の代わりとして利用することが可能です。
  • 吸水性土のうで浸水防止
    水を吸収すると膨張する吸水性土のうがホームセンターなどで販売されています。これを水の侵入口に並べておけば、浸水対策になります。水を含む前は軽量でコンパクトなのですが、一気に膨張し重くなります。

簡易的な浸水防止方法はさまざまなものがありますので、用意できる物で開口部からの浸水を防ぐと良いでしょう。
なお、台風などの襲来は天気予報である程度予測できますので、水害の可能性があると報道された場合、家周囲の排水溝などをきちんと掃除しておくことも大切です。

参考:平塚市「家庭でできる浸水対策」より

まとめ

今回は、一般家庭での水害対策についてご紹介してきました。この記事でもご紹介しているように、近年では台風や集中豪雨による水害が毎年のように発生しています。特に注意が必要なのは、今までは水害が発生するような事が無かった地域でも、突然河川の氾濫などを引き起こす豪雨被害が発生している点です。特に台風に関しては、地球温暖化などの影響もあり、日本に上陸する台風の大型化が進行していると言われています。さらに、台風の進路も数年前と変わってきていますので「自分の住んでいる地域は水害の心配はない!」などと誰も言えないような状況になっているのです。

したがって、家づくりを進める時には、まずハザードマップなどで建設候補地で考えられる災害の種類などを確認しておくのがオススメです。さらに、近くに河川などがある場合などは、「浸水対策を考えた構造」を用いることがオススメです。
最後は、どのような場所であっても、「絶対に水害は起こらない!」とは言えない状況ですので、自分で浸水対策ができるアイテムを準備しておくことや、安全な避難場所の確認などは絶対にしておくようにしましょう。