今回は、屋上スペースを有効利用できると近年非常に高い人気を誇っている陸屋根について簡単にまとめてみたいと思います。最近では、戸建て住宅でも屋根がフラットな形状になる陸屋根を選択する方が増加しており、夏になると屋上スペースでバーベキューを楽しむなんてこともできるようになっています。さらに陸屋根を採用した建物は、キューブ状の外観になるなど、海外の豪邸やミッドセンチュリー感があるため、従来の日本建築にはない独特の高級感を出すことができるのも人気の理由の一つです。
スペースの有効活用や高級感のある外観デザインが実現することが大きなメリットとなる陸屋根ですが、この屋根形状を選ぶのであれば、きちんとデメリット面もおさえておかなければ後々困ってしまうことになるかもしれません。住宅の屋根というものは、何か問題があるからと後から屋根だけ交換する…なんてことも難しいですし、家を建てる時には慎重に選ばなければいけないのです。
そこでこの記事では、陸屋根の特徴や、そのメリット・デメリットなどをわかりやすくご紹介していきたいと思います。
そもそも『陸屋根』とは?
一般の人からすれば、屋根形状の名称を言われても「どんな屋根のことだ?」とイマイチイメージできない…という方も多いかもしれませんね。陸屋根とは、マンションや病院の屋上のように、勾配の無い平面になった屋根形状のことを指しており『りくやね』や『ろくやね』という読み方になります。
家づくりの打ち合わせの中ではフラット屋根やフラットルーフなどと言う呼び名で呼ばれることもあるのですが、基本的に「屋上のある屋根」をイメージしていただければ良いかと思います。もともと日本国内では、切妻屋根などの傾斜のある屋根形状が主流だったのですが、洋風建築の様な外観イメージが好まれるようになってから年々その人気が高くなってきています。ちなみに、テレビCMなどでもよく見かけるヘーベルハウスなどは陸屋根を中心としたラインナップになっています。
陸屋根を採用した建物にはさまざまなメリットがあるの確かなのですが、導入する場合には知っておかなければならないデメリットも多いので、以下でその辺りをご紹介していきましょう。
『陸屋根』のメリット
それではまず、傾斜の無い平坦な陸屋根を採用した場合のメリットからご紹介していきましょう。陸屋根を採用した住宅は、なんといってもスタイリッシュでモダンな住宅デザインが実現できるというメリットがあります。スッキリとした見た目ながら高級感を醸し出すこともできますので、デザイン次第では一般住宅が高級住宅のように見えるようになるのです。
したがって、とにかくスタイリッシュな家が良い…などと、住宅のデザイン性に拘りたいという方には陸屋根がオススメです。他にもメリットがたくさんありますので、以下で簡単にご紹介しておきましょう。
屋上スペースを活用できる
都市部など、狭小地で家を建てる場合、庭やベランダスペースを確保することができない…といった事も珍しくありません。こういった場合、住宅の屋根に陸屋根を採用すれば、屋上をテラスとして活用することができるようになるなど、スペース的な大きなメリットが得られるのです。あまり大きな土地を利用できない日本の都市部などで考えれば非常に大きなメリットになると思います。
木造建築などでは、陸屋根+片流れ屋根などと言った屋根形状も増えています。なお、陸屋根の屋上部分については、テラスなどとして利用するのではなく、太陽光発電の設置スペースとして活用する方も多くなっています。傾斜のある屋根ではできない使い方ができるのが大きなメリットです。
屋根の点検・メンテナンスが容易
どのような住宅でも同じですが、家は購入して終わりではなく、定期的に点検を受けて必要に応じてメンテナンス工事を行わなければいけません。屋内や住宅設備の点検・メンテナンスは比較的容易にできますが、外壁や屋根のメンテナンスを行う場合には足場の組み立てが必要になり、工事が大掛かりになってしまうのです。
しかし、フラットな形状をした陸屋根の場合、屋根の上での作業が容易になるため、屋根の点検・メンテナンスの際でも足場なしで作業を進めることが可能です。住人による簡易的な点検についても、屋上を利用するついでに細かな点検を行うことができるようになるなど、メンテナンス性の良さは他の屋根形状にはないメリットになります。
居住空間が広く取れる
最後は、陸屋根を採用した場合、三角屋根の住宅と比較すれば、居住空間を広く取れるというメリットです。陸屋根は、三角屋根に比べて建築スペースを広く取れ、建物全体の体積を大きくする事ができるというメリットがあります。
『陸屋根』のデメリット
次は陸屋根のデメリットです。上記のように、陸屋根にはデザインやスペース的なメリットがたくさん存在しています。しかしその一方で、いくつかの大きなデメリットが存在するのです。したがって、住み始めてから後悔しないよう、しっかりとデメリット面もおさえておくべきでしょう。
最上階の居室が暑くなりやすい
陸屋根を選択した場合、三角屋根に比較すると天井懐(てんじょうふところ)と呼ばれる天井裏スペースを十分に取れません。全く取れないわけではないのですが、断熱材を敷き詰めることになりますので、物を置くようなスペースなどは基本ありません。天井懐が無い場合のデメリットは、熱気が溜まりやすくなってしまうことで、それにより最上階(2階建てなら2階、3階建てなら3階)部分が暑くなりやすいのです。
陸屋根の場合は、切妻屋根などと比較して、屋根裏に通気口が取れないためしっかりと断熱材を施工されることになります。それでも2階部分の部屋は熱気を逃がすための窓の設置などは考慮しておいた方が良いでしょう。
※切妻屋根などの三角屋根と比較して、圧倒的に暑くなるわけではありません。あくまでも同レベルの猛暑条件では陸屋根の方が不利になる程度です。
屋根裏部屋を利用できない
上にも関連しますが、陸屋根を採用する場合、屋根裏部屋を設計することができなくなります。屋根裏は、お子様の部屋や収納スペースとして近年人気となっていますが、陸屋根では屋根裏が設置できないのです。
したがって、陸屋根を選択する方の多くは、季節家電やレジャー用品などの収納のため別に大きな収納スペースを設計する方が多いです。
雨漏りリスクが高い
陸屋根最大のデメリットと言われているのは、他の屋根形状と比較すると、雨漏りリスクが高くなってしまう…ということです。
フラットルーフなどとも呼ばれるように、陸屋根は他の屋根形状とは違い、ほぼ水平な屋根となってしまいます。そのため、雨が降った際などには水はけが悪く、長期間水が残ることで防水処理などの劣化も早まってしまうのです。もちろん、排水溝などに向けて多少の傾斜はつけていますが、それでも切妻屋根などと比較すれば圧倒的に水はけが悪くなるのです。したがって、しっかりと防水処理を行い定期的なメンテナンスを行っておかなければ、雨漏りしてしまう可能性が高くなってしまうのです。木造建築などで陸屋根にするのが難しいと言われるのは、雨漏りの危険性が高いせいとも言われています。
ただし、建築技術もかなり向上していることから、最近建てられる陸屋根の住宅はそこまで雨漏りリスクが高くなることはないと言われています。もちろん、それでも切妻屋根などと比較すれば陸屋根の雨漏りリスクの方が高いので、防水処理のメンテナンスは欠かさずに行わなければいけません。
まとめ
今回は、住宅の屋根形状として近年人気になっている陸屋根の基礎知識についてご紹介してきました。
陸屋根は、他の屋根形状とは異なり、フラットな屋根を実現できるようになるため、屋上をテラスなどとして活用できるというメリットが存在します。最近では、屋上バーベキューやガーデニングを楽しみたいから、屋上がある家が欲しいというお話はよく耳にしますが、そういった希望がある方にとっては非常にメリットのある屋根形状と言えるでしょう。しかし、この記事でもご紹介したように、雨水が長くとどまることになるため、傾斜のある屋根形状と比較すれば、どうしても雨漏りリスクが高くなってしまいます。もちろん、防水技術などが向上していることもあり、基本的にはそこまで雨漏りの心配をする必要もないのですが、定期的なメンテナンスを怠ってしまうと、意外と簡単に雨漏りをしてしまう危険があるでしょう。
陸屋根を導入する場合には、定期的な点検とメンテナンスが欠かせないということをしっかりと頭に入れておきましょう。