今回は、住宅の設計などを行ってくれる『建築士』の資格について少しお話しておきたいと思います。一般の方でも『建築士』という資格に一級建築士と二級建築士という2つの種類があるのはご存知だと思います。しかし、この2つの資格について、具体的に何が異なるのかについてはイマイチ理解していない…という方の方が多いように思えます。
実際に、インターネットで建築士について調べてみると「注文住宅の設計が二級建築士なのですが大丈夫ですか?」といったような質問が上がっているなど、一級建築士と比較して二級建築士の信用性がかなり低いように思えます。最初に行っておきますが、一級建築士と二級建築士の違いは「設計できる建物の規模が違う」だけであり、一般住宅の設計であれば二級建築士が担当していてもなにも問題ありません。それどころか、一般住宅の設計に関しては、二級建築士の方が信用できる場合もあるほどなのです。
そこでこの記事では、一級建築士と二級建築士について、それぞれの特徴や違いをご紹介していきたいと思います。
一級建築士と二級建築士の特徴について
それではまず、一級建築士と二級建築士、それぞれの特徴についてご紹介していきましょう。これから、どちらかの資格を取得したいと考えている方も、ぜひ覚えておきたい内容です。以下で、それぞれの資格の特徴についてご紹介しておきます。
一級建築士の特徴について
まずは一級建築士からです。一級建築士は「設計する建物に制限がない」資格となります。
例えば、注文住宅など、一般の戸建て住宅のような比較的小規模な建物の設計が可能なのはもちろん、オリンピックを開催するような大規模な競技施設や国を代表するような建築物の設計を行うことも可能です。
この一級建築士は、国土交通大臣からの認可を受ける国家資格で、規模、構造形式、構造材料共に「何でも」設計が可能だと言う点が大きな特徴となります。したがって、一級建築士は、「意匠、構造、設備」など、建築物周りに関するすべてのことに関して高度な知識が必要とされます。なお、さらに専門的な業務を行う場合、構造設計一級建築士や設備設計一級建築士などの取得も必要となります。
二級建築士の特徴について
次は二級建築士の特徴についてです。二級建築士は、一級建築士に比べて「設計できる建物の規模と構造に制限がある」という特徴があります。分かりやすく言えば、「戸建て住宅程度の規模の設計」が対象で、木造建築の場合は3階建てまでが基本となります。(建物高さ13m、軒高9mを超える建物は設計できない)
他にも、建築物の延べ面積に関しても制限を受け、1000㎡以上の建築物設計は認められていません。さらに、木造建築物以外のRC造や鉄骨造の建築物の場合、制限がより厳しくなり、「高さ13m以下かつ軒高9m以下で、平屋建てから3階建て、さらに延べ床面積100㎡以下」という制限があります。
このように、二級建築士に関しては「戸建て住宅の設計」を対象とした資格と理解しておけば良いと思います。そのため、注文住宅などを専門としている建築会社などは、二級建築士を多く抱えています。これは、住宅の設計が中に住む人の動きや家の使い方、将来的なライフプランまで考えて設計提案が必要となるためで、建築設計に関する知識だけでなく、実際に住む人の事を考えた経験がとても重要になるからです。
一級建築士と二級建築士の違いについて
それではここからは、一級建築士と二級建築士の違いについてご紹介していきましょう。
一級建築士と二級建築士の共通点については「戸建て住宅の設計が可能」だと言う点です。どちらの資格についても、「木造建築物の平屋建て、3階建てまでの建物で延べ面積が1000㎡以下」の場合は、問題なく設計することが可能です。最近では、一般住宅を専門とする建築家でも一級建築士を取得する方が増えていると言われていますが、戸建て住宅の設計に関しては、どちらの資格でも構いません。これは、建築、構造、設備の高度な知識が必要だと言う点は、両者に共通して言えることだからです。
それでは、両者の違いはどのような点なのでしょうか?以下で見ていきましょう。
資格としての違い
一級建築士と二級建築士は、資格を登録する機関が異なるという違いがあります。一級建築士は国土交通大臣が免許を交付するのですが、二級建築士については、各都道府県知事が交付することになっています。
国土交通大臣から交付を受ける一級建築士の方が、より大きな権利を与えられているということがわかりますね。したがって、一級建築士の資格試験は、二級建築士に比べてより幅広い専門知識が必要になります。
仕事内容の違い
一級建築士と二級建築士については、それぞれの仕事内容が異なる場合が多いです。二級建築士を取得している方の多くは、一般住宅を専門に設計を行う建築家となります。建築設計の仕事は、何も一級建築士の資格が無いとできないわけではありません。実際に、個人事務所を構えている方の中には、二級建築士の資格で仕事を受注している方も多いのです。
上述したように、一級建築士は、設計できる建物に制限が無いという特徴があります。そのため、戸建て住宅以外にも、公共施設や商業施設など、大規模な建築物の設計を受注することができます。
戸建住宅の設計なら一級と二級どっちが良いの?
それでは最後に、戸建て住宅の設計をしてもらうなら「どっちが良いのか?」について考えてみましょう。インターネットなどで少し検索してみると、大手質問サイトなどで「設計担当が二級建築士なのですが大丈夫ですか?」などと言った質問が多く並んでいます。これは、二級建築士が一級建築士よりも格下だという認識を持っているからだと思います。
しかし、この記事の内容から分かるように、こういった認識自体が少し間違っているのです。そもそも、戸建て住宅の設計であれば、どちらの資格保有者であっても問題なく進めることができます。一級建築士に関しては、「設計できる建物の制限がない」という特徴から、一級建築士に依頼したほうが安心だと考えてしまうのです。しかし、一級建築士の中には、そもそも木造の戸建て住宅の設計を依頼されることが少なく、大規模建築物の設計ばかり行っているという方も少なくありません。逆に、二級建築士の場合は、メインが戸建て住宅の設計ですので、非常に経験豊富な方が多いのです。
つまり、どちらの資格でも、行える戸建て住宅の設計に関しては、「資格の種類」を気にするのではなく、戸建て住宅の設計経験がどの程度あるのかを気にすべきなのです。いくら一級建築士の資格を所有していたとしても、初めて戸建て住宅の設計を行う場合、そこに住む人の住みやすさまで考慮した設計が行えない場合もあります。しかし、経験豊富な二級建築士の方であれば、過去の設計実績をもとに、さまざまな提案をしてくれることでしょう。
こういった事から、戸建て住宅の設計に関しては、保有資格に注目するのではなく、「戸建て住宅の設計経験」を重視するのがオススメです。実際に、大手ハウスメーカーなどでも、設計は二級建築士が行う場合がほとんどです。
まとめ
今回は、一級建築士と二級建築士の違いについてご紹介してきました。この2つの資格については、設計できる建物の制限が異なるのが大きな違いです。ただし、戸建て住宅の設計に関しては、どちらの資格でも問題なくできますので、家を建てる時の設計担当者の資格はそこまで気にする必要はないと思います。
この記事でご紹介したように「設計担当が二級建築士で頼りないかも…」などと不安に思ってしまう方も多いのですが、実は、一級建築士の中には大規模建築物ばかり担当しており、戸建て住宅の知識が非常に少ない…という場合も珍しくないのです。つまり、戸建て住宅に関する知識に関しては、保有資格だけでは判断することができず、実際に打ち合わせしてみて、自分の希望をきちんと設計に反映してくれるのかと言う点で判断するしかありません。
なお、むとうの家では、戸建て住宅の設計経験も豊富な一級建築士が在籍していますので、安心してご相談ください。