不動産の売却を行う時には、「できるだけ高く売りたい…」「いったい、いくらぐらいで売却できるのか?」など、自分に入ってくるお金のことばかりが気になるものでしょう。
しかし、不動産売却の際には、さまざまな費用がかかるものですので、「自分が支払うべきお金がいくらぐらいなのか?」や、それぞれのお金は「いつ支払わなければならないのか?」ということも頭に入れておかなければいけません。売主として、不動産売却に必要になる費用が「いつ?」「いくら?」必要になるのかを事前に理解しておかなければ、いざ支払いが必要になった際に、現金が準備できておらず困ってしまうことになるかもしれません。
そこでこの記事では、不動産売却を進める際、基本的な売却の流れに沿って、売主が頭に入れておきたい費用をご紹介していきます。
売買契約前に費用が発生する場合もある
不動産売却を行う時、通常であれば売買契約後に費用が発生するものです。しかし、築年数が経過した古い木造一戸建て物件などの売却の場合には「ホームインスペクション(住宅診断)」のためにいくらかの費用が発生する可能性があります。
もともと不動産業界では『新築信仰』のようなものがあり、新築一戸建てに憧れる方が多いです。しかし、空き家問題などの解消のため、中古住宅の売買に力が入れられるようになってから、中古の一戸建て需要も高くなっているのです。しかし、このような状況の中、中古木造住宅の売買において、購入後に隠れた欠陥が発見されることが多々あり、当事者間でトラブルになることが増えていると言われているのです。
この状況を鑑み、2016年2月に、宅建業者に対して売買契約時に「ホームインスペクションを実施するか否かの確認をすること」を義務化する改正宅建業法案が閣議決定されたのです。
これにより、中古住宅の売却時には「ホームインスペクション」をすることがスタンダードになると予想されています。ちなみに、中古住宅をくまなく調査する場合には、10万円を超えるような費用が発生する場合も珍しくありませんので、古い住宅の売却を検討している場合には、この費用を想定しておきましょう。
売買契約以降に必要になる費用
不動産売買にかかる売主の費用は、そのほとんどが売買契約時、またはそれ以降に発生します。ここでは、不動産売却を検討中の方がおさえておきたい主な費用をご紹介します。
仲介手数料
仲介手数料は、不動産取引を仲介してもらう際、不動産会社に対して支払わなければならない費用です。不動産売却時に必要な費用の大部分を占めるのがこの仲介手数料だと考えておきましょう。なお、不動産の売買にかかる仲介手数料に関しては、宅地建物取引業法によって売却価格によって上限金額が設定されています。
- 取引額200万円以下の部分 ⇒ 取引額の5.5%以内
- 取引額200万円を超え400万円以下の部分 ⇒ 取引額の4.4%以内
- 取引額400万円を超える部分 ⇒ 取引額の3.3%以内
参考:大阪府公式サイトより
上記は、上限金額であり、実際に支払われる金額は、この限度額以内で話し合いで決めるものとなります。なお、消費税に関しては別途必要になります。
この仲介手数料の支払いタイミングに関しては、成功報酬となりますので、売買契約が成立するまでは支払い義務は発生しません。細かな支払いタイミングは、不動産会社によって微妙に異なり、基本的に以下のいずれかのタイミングとなります。
- 売買契約時に全額
- 売買契約時に50%、残金決済時に50%
- 決済時に全額
不動産の売却は、高額な取引となりますので仲介手数料もそれなりの金額になります。「いつ支払わなければならないか?」は、実際に売却を依頼する不動産会社と打ち合わせしておきましょう。
印紙代
不動産売買契約書には収入印紙が必要になります。収入印紙の金額については、売買価格によって異なります。例えば、「1,000万円を超え5,000万円以下」の売却価格となった場合、売買契約書1部につき1万円の収入印紙が必要になります。
不動産売買の契約書は、通常「売主1通、買主1通」の計2通を作りますので、その分の収入印紙代を売主が負担しなければいけません。
登記関係書類の取得費用
決済時には、不動産の登記名義を売主から買主に変更しなければいけません。そのため、これに必要になる関係書類を取得するための費用がかかるのです。基本的に以下の費用と考えておきましょう。
- 印鑑証明の取得費用
不動産売買の捺印はすべて実印です。そのため印鑑証明を取得しなければいけません。印鑑証明の取得費用は自治体によって異なりますが、大阪市であれば1通につき300円で取得できます。なお、不動産の売買を行う際、登記上の住所と現在の住所が異なる方は住民票も必要です。 - 固定資産税評価証明書
所有権移転登記をするために必要です。物件所在地を管轄する役所で取得でき、取得費用はコチラも数百円です。
住宅ローンが残っている方にかかる費用
住宅ローンがまだ残っている不動産を売却する際には、売却時に一括で返済しなければいけません。一般的には、売却価格をそのままローンの返済に充てることになるため、現金を別途用意することはあまりありません。ただし、ローン残高が売買価格を上回っている場合には、不足している金額を実費で用意しなければいけません。また、ローンの契約内容によっては、繰り上げ返済をする際に、違約金や手数料がかかってしまうケースがありますので、この辺りは金融機関にしっかりと確認しておきましょう。
住宅ローンの一括返済のタイミングに関しては、不動産売買の決済時と同時に行うのが通常です。買主が売主の指定口座に売買代金を入金し、それと同時に住宅ローンの残高分が一括で引き落とされる形となります。したがって、ローン残高が売買価格を上回っている場合は、あらかじめ不足分を口座に入れておく必要があります。
抵当権抹消費用
住宅ローンの返済が完了すれば、金融機関から抵当権抹消書類がもらえます。そしてこれを司法書士に渡して抵当権抹消登記をしてもらうことになるのです。この手続きを進めてもらうためには、司法書士に支払う費用として2万円前後の費用がかかります。また登記免許税が不動産1件につき1,000円必要です。
この費用は、決済時に現金で支払うか、司法書士の指定する口座に振り込むことになります。
引っ越し費用(売買契約前の場合もあります)
住み替えに伴う不動産売却の場合は、新居への引っ越し費用も頭に入れておかなければいけません。家族全員での引っ越しとなると、荷物の量も多くなりますので、10万円を軽く超えるような引っ越し費用になることも珍しくないのです。
したがって、直前にバタバタしなくても良いよう、引っ越し会社との打ち合わせを早めに進めておくのがオススメです。なお、引っ越し費用は荷物が多ければ多いほど高額になってしまいますので、不用な大型家具・家電などの買い替えを予定しているのであれば、不用品の処分方法も事前に考えておきましょう。
まとめ
今回は、不動産売却時に売主側が考えておかなければならない費用についてご紹介してきました。不動産売買時には、意外に多くの費用がかかってしまうことに少し驚いてしまった方も多いかもしれません。
ここでご紹介した費用に関しては、不動産売買を仲介してもらう不動産会社によって微妙にタイミングなどが異なる場合もありますので、不動産会社との媒介契約を結ぶ前にしっかりと売主側が支払わなければならない費用とタイミングを確認しておくことがオススメです。特に、住宅ローンが残っている方に関しては、予想外の費用がかかってしまい困ってしまうことも考えられます。